minako-music.com
[ Back ]
ライブ・レポート

MAXIシングルCD発売記念ワンマンライブ

    日時 : 2002/12/12(木) 20:00〜
    場所 : 高円寺JIROKICHI
    出演 : Vo & P: 美菜呼、B:平石カツミ、G:細川圭一、Dr:鈴木タケオ



<第一部>
 01.10年前、それから
 02.雨上がりのブランコ
 03.12月
 04.夜明けの雪
 05.ジグソーパズル
 06.恋ト呼ブモノ
 07.川の歌

<第二部>
 08.ランドセル
 09.歩道橋
 10.逢いたいよ
 11.風の中のヤジロベエ
 12.チョコレートケーキ
 13.宝島
 14.Train921号

<encore>
 15.花かんざし
 16.12月の天使

<extra present
  from Minako and members>
 17.Cry for the day

2002/12/12 'December'


高円寺の駅を降りて北口を右に曲がると冷たい12月の月が舗道を照らした。
NEWDAYSを過ぎると、TOKYU STOREの前にタクシーが、出番を待つ移動サーカスの あわれな象の列よろしく、ぼんやりと連なっている。
カンパリオレンジ色した東京行きの電車がまた一本流れていく。

大きなすし屋の前でガードレールを乗り越える。
東京のこの日の最低気温は1.9℃。
気の早いクリスマスツリーが設置された、メンズショップMINAMIの前を 寒そうにポケットに手を突っ込んで出番前のギタリスト、細川圭一が歩いていくのが 見えた。
午後7時。Jirokichiのエントランスに「美菜呼」の文字を確認すると、何故だか少し 安心した。
ドアを、開ける。

開演30分くらい前に、美菜呼がカウンターに近づいてきた。
探し物らしい。あちこちの紙をひっくり返し、その仕草から ほんの少しイライラしているのが伝わってくる。
奥ではさっきからピアノの調律の単調な金属音が何度も何度も客席に響いている。
受付の女性と一言、二言、小声で早口に言葉を交わすと、ピアノにチラッと強い視線を 投げかけて美菜呼は再び楽屋に足早に去っていた。
受付の女性は困惑した顔をしていたが、目元は笑っていた。
「いつもああだから。…それからね。今ピアノの調律をしてくれてるでしょう、 あの人もいつも美菜呼の為に念入りにやってくれるのよね。」
本番前の美菜呼の集中力は尋常ではない。普段の美菜呼とは何もかも違う。
今年最後の高円寺ライヴに臨む美菜呼の緊張感に気圧されていると、ドアが開いて 細川が戻って来た。さっきよりも、少し眼に力強さを持ったミュージシャンの顔。 続いて、平石カツミ、すぐ後に鈴木タケオが入ってきた。
調律師が、納得したようにひとつ、最後にポーンと音を鳴らして、ピアノの椅子を もとの位置に戻す。
もうすぐ、ライヴが始まる。

                    ☆

ステージに上れば、やはりいつもの底抜けに明るい美菜呼だった。
「ライヴで白着るのは初めてかもしれない…。あたし、白の衣裳って着ないんだけど、 カクテルのみんながかわいい格好してくるから、あたしもね、かわいらしい格好の方が ウケるんじゃないかと思って。」
そう言って客席を笑わせる。
2002/12/12 Minako


「大きな、夢があります。みなさんにも、あるかと思います。」
最初の曲は「10年前、それから」だった。
白いシャツから出ている細い腕が、いつかみたように空に向かって伸びていく。 その情景に、鼻の奥がツンとした。
腰に手を当てて、口をキッと結び、右後に振りかえる美菜呼。
第一走者からバトンを渡されたランナーみたいに、ギターは無言で美菜呼の 視線を、やっぱりキッと受けとめた。
「雨上がりのブランコ」が始まった。


  2002/12/12 Mr.Hosokawa & Minako 2002/12/12 Mr.Hiraishi & Mr.Suzuki  


3曲目に「12月」を歌った美菜呼が言う。
「ここからカクテル発売記念弾き語りです。」
改めて、完璧に調律が整ったピアノに向かい、弾き始めた「夜明けの雪」。

2002/12/12 Minako
First Maxi に収められたバラードは、多くのファンに受け入れられて しっかり「名刺代わり」の役割を果たすまでになったから、美菜呼も 嬉しそうだった。
みんなの拍手に「どもありがと。」といつものように 最後の「と」に少し照れたようなアクセントを置いてつぶやくと、ふぅ、と ちいさく息をついて 「今、思ったんだけど、白い服着ると背筋が伸びるね!白い服着てたら あたし、ノンべにならなかったかなぁ?」

「恋ト呼ブモノ」を歌う。
12月4日付け“HMVジャパニーズポップス TOPシングル100”で「カクテル美菜呼」は 53位にランクインしていた。
「あたしの下に、中島みゆきさんとか、ゆずさんとかがいらっしゃいます。(笑)」
美菜呼が相好を崩して報告すると、 会場内に興奮の波が一気に駆け廻る。あちこちから応援の声。
涙を流している人もいた。
2002/12/12 Minako

「これって、実際、すごいことなんですか?」
我流流・我流会のBONNの問いに美菜呼担当A&Rディレクターは その柔和な顔に微笑みをたたえながらもしっかりと頷いた。
「すごい事ですよ。とても良いスタートを切ったと言えます。」

  2002/12/12 Minako 2002/12/12 Minako  


第1部ラストが、新曲だった。
美菜呼が今秋の欧州旅行で見てきたモルダウ、或いはアルノ、ザルツァッハ。 夢にみていたドナウ川も見た、とMCで語る。
「我流流・我流への道」Vol.175 で、川について美菜呼はこんな風に書いた。
「国の歴史を見守ってきた川、戦士の血やその家族の涙を洗い流し、 人々は心の傷をも川に流し前を向いて上を向いて生きてきたのであろう・・。」 そして、日本の川にもやはり人々の思いや痛みの歴史が流れているのだ。 どんな歴史を川は見てきたのだろう、そう結んだ。
川は、ずっと美菜呼を惹きつけてきた。ずっと心に憧れの川があった。 そんな想いを、ちいさな秋の虫に託して夢の川へと向かわせた詩を書いたこともあっ た。
美菜呼の川への思いの結晶、「川の歌」。

2002/12/12 Minako


「そうそう、先日のライヴのSEはジョニ・ミッチェル作詞作曲 ホリー・コール演奏の『リヴァー』そう、川って曲。 いいSEだったでしょ?」

ライヴから2日たって、美菜呼は得意げに教えてくれた。
自分の好きなものを紹介することが大好きなのだ。
美菜呼のエッセイ、「生きてますか」には美菜呼の「大好き」がいっぱいだ。 夕方の歩道橋で歌う「翼をください」。 自分で作る、「温泉の儀」。 アツアツの天ツユにつけて七味をたっぷりかけた「芋の天プラ」。

「好きなもの」と一緒の時、それを話す時、美菜呼はまるっきり子供みたいに夢中で ある。
話しながら、よく笑い、そしてよく泣き、よく歌い出す。
それから、自分の好きなものと同じくらい、人の好きなものを知りたがり、 そして、心底からの笑顔でそれを祝福してくれる。笑いながら、泣きながら。 或いは歌いながら。
好きなもの、好きな服、好きな人、好きな歌。
赤い服に着替えて登場した第2部、これでもか、というくらいの美菜呼の名曲の数々を 惜しげもなく送り出した。「ランドセル」から「歩道橋」へ。間違いなく、みんなが 大好きな曲を届けているという、美菜呼の自信が伝わってくる。
「チョコレートケーキ」の途中ではアドリブっぽく
“ジングルベル”を叩いた。
 Jingle bells!
 Jingle bells!
 Jingle all the way!
 Oh! what fun it is to ride
 in a one horse open sleigh!

ピアノが奏でるメロディーが一呼吸置いた、
その瞬間に、
 Happy birthday to you!
2002/12/12 Minako
平石カツミの声が響き、曲は一転、チョコレートケーキに戻る。
呼吸があった、とはこういうのをいうのだろう、そのパフォーマンスに歓声があがる。
そのまま、鈴木タケオのドラムが力強く「宝島」へのドアを突き破る。

  2002/12/12 Minako   2002/12/12 Mr.Hiraishi  
  2002/12/12 Mr.Hosokawa   2002/12/12 Mr.Suzuki  

「歌うって、楽しい!」
地の底を揺るがすような夢を追っての大冒険の後に、 美菜呼が叫んだのは、自分の好きなみんなに、 自分の好きな歌を届けることができた喜びからに違いなかった。


  2002/12/12 Minako   2002/12/12 Minako  
  2002/12/12 Minako   2002/12/12 Minako  
  2002/12/12 Minako   2002/12/12 Minako  


恥ずかしい言葉を臆面もなく使わせてもらえるなら、美菜呼のライヴにいくと 世界の一つ一つ、隣の人も愛したくなる。誰にも言ってない夢を語りたくなる。少し 涙もろくなる。
自分に、好きなものがいっぱいあることに気づく。
感謝したくなる。世界のいろんなものに。

                    ☆

「みなさんのおかげで今年はCDも出すことができました。ほんとにありがとう。
それから、平石カツミがずっとサウンドコーディネーターとして力を貸してくれました。 感謝したいと思います。」
突然いわれたのだろうか、一瞬のキョトンとした表情の後に何故か小さく ベースを抱えなおし、ニヤリと美菜呼に応えた平石に会場から拍手が贈られて、 美菜呼も満足そうに頷く。

ラストに特別に贈ってくれた「Cry for the day」に、期せずして手拍子が 起こる。
美菜呼が幸せそうな表情で「どうもありがと!」と笑顔を向ける度に 東京中のクリスマスのイルミネーションが1つずつ灯っていくような錯覚を覚えた。
東京のこの日の最高気温、9.0℃。
夜10時半、Jirokichiを出て駅へ向かう路は、確かにそれよりあたたかい気がした。

<こよ> (文中敬称略)


 

[ Back ]
[ TOP of this page ]

Copyright