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ライブ・レポート

アコースティックワンマンLIVE
〜 そして涙は儚い海の泡となる 〜

   日時 : 2003年03月16日(金) 20:00〜
   場所 : 高円寺 JIROKICHI
   出演 : vocal & piano:美菜呼 bass:平石カツミ acoustic guitar:近内康広 percussion:竹本一匹



<第一部>
 01. 風の中のヤジロベエ
 02. Tumblin' Song
 03. 平凡
 04. 12月の天使
 05. 笑っていたい
 06. 恋ト呼ブモノ
 07.夜明けの雪

<第二部>
 01. Cry for the day
 02. 歩道橋
 03. 今度引越しするなら海の近くがいい
 04. 雨上がりのブランコ
 05. チョコレートケーキ
 06. 宝島
 07. Train921号

<encore>
 01. 川の歌


ギター近内氏の曲順表


3月16日、雨の日曜日。ジロキチは満席で、立ち見の人も多い。今日は新メンバーの影響か、 見慣れない(?)若いお客さんの姿もあって、ひときわ賑やかだ。
闇の中、パーカッションを除いたメンバーの三人(でもつむじは7つ …内訳はライヴに来た人が知っています)がそれぞれの位置につき、 BGMが止んだ瞬間にピアノの音が響く。 今日のオープニングは「風の中のヤジロベエ」。
 
piano1    「手を伸ばして・・・」

ぞくっとする。体の内側から声が聞こえてくるような、この感じ。
凄みを感じる。大丈夫だって思う。
 
バンド

20時少し前、トイレに行こうとして、ライヴ直前の美菜呼とすれ違った。美菜呼は親指をビッ と立てて腕を突き出して見せる。薄暗くて顔色まではわからないが、緊張からか、 ややこわばった顔に見える。こちらの方がうろたえて、親指を立てながら「うぃーっす」って デキの悪い学生の頃みたいな返事をする。
みなやん、昨日は眠れた? 調子はどう?
「我流流・我流への道」への書き込みによると、相次いで不幸があったらしい。 昨日はおばあさん、今朝は叔父さんの訃報。美菜呼は飲み明かすどころか、 泣いたり悲しんだりする暇さえも無かったはずだ。
 
美菜呼アップ

「Tumblin' song」。
「君だけはわかっていてくれるから」「君だけは信じていてくれるから」
このフレーズで美菜呼にオトされた(?)ファンの方も多いことだろう。でも今日はその先の
「もう少しだけ夢を見ているつもり」「いつかきっと夢を、夢をかなえるさ・・・」
こっちを聴きたかった。今日は、自分のことを、自分の為に歌って欲しい。
「ありがとう!」の声をはさんですぐに「平凡」。
若い力か、客席のテンションがミョーに高い。「今日すごいねー」と美菜呼が言うとすぐに「最高だぜっ!!」と返ってくる。 美菜呼はちょっと笑って、
「季節はずれですが、どうしても歌いたかったんで、この曲をお届けします。」
そして、「12月の天使」のイントロを奏でる。天使が舞い降りて、やるせない出来事を、 ジングルベルのメロディーで包み込む。
 
美菜呼&piano

心の奥の薄暗く湿ったところに傷があって、鈍い痛みが消えない。それが少しずつ癒されていく感じ、 とでも言おうか。えっ、イミワカンネエ? ビミョーに、アリエネエ? ごめん。ブッチャケ、 俺もなんて言っていいかワカンネエ。でもナニゲにカナリいいよ、この曲。
もとい。ふと思い出す。原田宗典の小説「劇場の神様」に、こんなことが書いてあった。
役者の世界に、「初日がでる」とか「神様が来てる」という表現がある。 芝居は常に未完成なものだが、どういう訳か、まるで完成したかのように 何もかもが上手くいく時がある。公演中最高の舞台。 舞台も観客も、 全ての空気が違って感じられる。そんな状態を指して言うらしい。
jirokichi なんだか今日のジロキチはいつもと違った雰囲気だ。熱気もそうだが、何より、 強く心に響いてくるものがある。不思議な予感と胸騒ぎにも似た期待感が満ちてくる。
ライヴハウスにも神様がいるんだろうか。 いや、そもそも今日ジロキチに来るとしたら、 それは、神様? 仏様?
美菜呼は「おばあさんも叔父さんもまだ霊安室で、火葬してないから仏様にはなっていない。 悲しんでいても仕方ないので、この曲で、送りたい。」と言ってピアノに向かう。
曲は「笑っていたい」だった。淡々と進み、しかし少しずつ確実に力強さを増していく。 最後のリフレインのところ、美菜呼がひときわ大きな高い声で「笑って生きたい!」って叫んだ時、 不意にぶわっと涙がわいて一気に溢れそうになって驚いた。体が震えて、呼吸が乱れる。自分の身に何が起こったのかわからない。金縛りにあったようで、拍手もできない。強いエネルギーを持った何かが体の中に流れ込み、同時に、何か大きなものに包まれているような気がする。
それは、確かに、ライヴハウスの神様が降りてきた瞬間だった。
 
つむじ7

美菜呼は吹っ切れたかのように、MCも飛ばす。これもライヴならではの楽しみ (頭痛の種だって話もあるけど) 。「恋ト呼ブモノ」がチャートにランクインして、 あっという間に落ちていったと言って笑っている。歌の後、「切なくなりました?・・・計算通りだ。」 でまた笑いをとる。
ことさらに何事もなかったように振る舞うでも、やたらと深刻ぶるでも、ただ淡々と、でもない。
これが美菜呼だ。
 
MC1

一部のラストは「夜明けの雪」の弾き語り。「近く寄りすぎて見えなかった安らぎに」のフレーズが心に残る。

後半はパーカッションの竹本さんを加え4人のユニット(これでつむじは8つ)。 「Cry for the day」で幕を開ける。
 
カルテット

美菜呼が主に吉祥寺でライヴをやっていた頃、この曲をぱったりと演らなくなった時期があった。 ステージの後、「『Cry for the day』ってもうやらないの?また聴かせてよ。」って言ったら、
「ありがと。あれはアタシも大好きな曲で、ほんとうに大事にしたいって思ってるの。だから、 いいかげんには演りたくないんだ。一番いい形で届けたいから、どういう形がいいか迷ってるうちは、 演らない。今は、できない。ほんっと、ごめんねー。」
1ファンの素朴かつ身勝手なリクエストに丁寧に応えながらも、安売りはしない。 譲っちゃいけないところは、絶対に譲らない。コンペイトウのイガイガが、ほら、ここにも。
そんなことを想っているうちに曲はすすみ、「・・・前よりも、優しくなれるね」の 声で我に返る。 当時はライヴのフィナーレを飾ることが多かったこの曲。ステージの盛り上がりに当時の光景が シンクロしていき、ぴったり重なったところで歌は終わった。

シンバル 続いてメドレーで「歩道橋」。新メンバーの竹本さんが、CDくらいの大きさのシンバル (ライヴ後、ベースの平石さんが「チャイナシンバルっていうんだと思うよ」って教えてくれました。 でも確かめるのは面倒だったみたいで、 「わかんなかったら『ちっちゃいシンバル』って書いときゃいーんだよ!」って言ってました)をぴちぃっ!って手で直接叩くのがアクセントで、より楽しい感じに。 「・・・一人じゃない・・・」のところでは客席から地鳴りのような歓声と拍手が湧き起こった。

ノリノリのあとはしっとりと。「今度引っ越しするんなら海の近くがいい」は、哀しみとも祈りともつかぬ味わい深い余韻を残す。 カウンター席で美菜呼に背を向けた格好の紳士が、火のついたタバコを灰皿に置き、 両手でワイングラスを包むようにして目をつむり、 美菜呼の一言一言にうなずくように体を揺らしながら聴き入っていたのが印象的だった。
 
海

mc3 ここには、会社員、公務員、自由業、商店主、主婦、学生、フリーター、無職・・・。 性別も年齢も職業も違う人達が集まり、同じ演奏に耳を傾け、それぞれに味わい、拍手を送る。これってすごいことだ。
きっと美菜呼のステージに出会ったきっかけもさまざまで、直接美菜呼から誘われた人(←たぶん飲み屋だ)、ラジオで聴いた人、先にCDを聴いた人、メンバーや友達からの口コミ、 ストリートライヴで偶然通りかかった人、などなど。そして、このホームページを偶然見て、初めてライヴに来てくれた人もいたとしたら・・・僕らとしても、こんなに嬉しいことはない。


bass

「雨上がりのブランコ」はサビの部分のベースラインがとにかくカッコイイ。 平石さんはさっきまではたまに口を開いても 「ひぃーっこしぃーーー」とか 「ひぃーざしぃーーー」くらいしか喋らず寡黙だったのだが(っていうかそれはコーラスだ)、 楽器では饒舌に歌いまくる。是非今度みなさんもチェックしてみて下さい。
「チョコレートケーキ」はやっぱり打楽器が入った方が楽しい。 パーカッションのリズムと応援団のパワーで大盛り上がり。 主役〜3月生まれの方〜への曲間の拍手のすごいこと!
そのままメドレーで「宝島」。近内さんのコーラスと、 ビオフェルミンの空き瓶によるボトルネック奏法が炸裂する。 歌詞の一部が変わっていたのにはちょっと責任を感じたりして。
 
party

ラストは「トレイン921号」。アタシは各駅停車、鈍行ですけどって美菜呼は言う。 電車に乗らずに線路脇に腰を下ろして笑ってる人達や、追い抜いて行く電車を見ながら、 美菜呼は何度も「もう降りようかな」とか「乗り換えようかな」って思ったに違いない。
でも美菜呼は降りなかった。今、トレイン921号には、仲間や、 奇跡的に冬を越したこおろぎなんかが乗っている。 きっと、美菜呼が好きだった、でももう逢えなくなってしまった人達なんかも乗っている。

アンコールは「川の歌」。ドラマか映画のエンディングにも似合いそうな、 壮大なスケールを感じさせるメロディーだ。
 
last

人の夢と書いて、儚【はかな】い。
人の為と書いて、偽【いつわり】。
瞬間と書いて、【とき】。
本気と書いて、【まじ】。
微温湯と書いて、【ぬるまゆ】。
・・・イミワカンネエ。
もとい。 人の夢と書いて、儚【はかな】い。
夢も命も似たようなものかもしれない。
命あるうちは、夢をみていたい。
みなやん、今日は夢のようなステージを、ありがとう。

<へのもちん>

 

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