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ライブ・レポート

Birthday Live『美菜呼の誕生日会へのお誘い』
〜 都心発の電車に乗ったコオロギの話 〜

    日時 : 2004年09月16日(木) 19:30〜
    場所 : 吉祥寺 MANDA-LA 2
    出演 : vocal & piano:美菜呼
          bass:平石カツミ harmonica:続木 力 percussion:石川雅康


 01.川の歌
 02.恋ト呼ブモノ
 03.蛍
 04.今度引越しするんなら海の近くがいい
 05.君だけはわかっていてくれるから
 06.ひらひらら
 07.夜明けの雪
 08.8月9日の風
 09.Hero
 10.ランドセル
 11.チョコレートケーキ
 12.宝島
 13.Train921号
 14.こおろぎの夢

<encore>
 01.春風
 02.Cry for the day

chococake


               
♪この街角 この場所だけ 時間が止まってるみたい……
              ‐“東京の三日月”by美菜呼

      
美菜呼作、「21時」

今日はバースデーライヴだ。仕事帰りに吉祥寺に駆けつける。この街は美菜呼と当時を知る美菜呼ファンにとって“記憶の場所”。MANDA-LA2に向かう道すがら、その頃の曲が次々と心に蘇る。
“Sugarless boy”。“真冬のゆりかご”。今日の“空はよく晴れて”、真っ白な“ひこうき雲”が目に眩しく、“季節の郵便局”から届いた“手紙”はかすかに秋の匂いがした。今日の帰りは“23時”くらいかな……なんてね。思わず感傷モードに入ってしまう。でもわかってる、今日の美菜呼はきっとあの頃の曲はあまり演らない。人は久しぶりの帰郷のとき、変わっていないみんなを見たいと思い、そしてそれにも増して、変わった自分を見せたいと思うものだから。
きっと美菜呼は、とびっきりの「今」を見せてくれるはず。まもなく開演だ。

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オープニングの“川の歌”にいきなり惹き込まれる。万葉の詩人は「なみだ」を「恋水」と書いた。人知れず恋水を含んで滔々と流れる川の水。遠く遠く流れ、やがて広い海へと注ぎ、恋水は儚い泡になる……。
続いて“恋ト呼ブモノ”。そして、“蛍”。聴かせる曲が続き、早くも客席はもれなく瞳の潤い30%増量キャンペーン実施中。

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前半のクライマックスは“今度引越しするなら海の近くがいい”。サビのところで、美菜呼の歌声に続木さんのハープがからむ。光と水と砂浜の情景が眼の前に広がり、曲に心の琴線が共鳴する。ぎこちない種は、花を咲かせた。ああ、俺も引越ししたい、今度引越しするんなら…職場の近くがいいなあ…やだねぇ、現実って。

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“君だけは分かっていてくれるから”の正しい聴き方。周囲を見回すと、みんな目を瞑って曲と一緒に揺れている。僕もあわてて目を瞑る。美菜呼の声。ハープの音色。沁みました。

ところで、この曲は少し前までは“Tumblin' Song”という名前でした。たぶん美菜呼はわかりやすいタイトルに、ということで変えたのでしょうが、するとタンブリンソングってどういう意味だったのかが気になります。今webのgoo辞書で“tumbling”を引くと、「マット上の宙返り」とあります。ああこれでわかりました、“Tumblin' Song”っていうのは「マット上の宙返り歌」。だからタイトル変えたのか? 違うな。真実は、藪の中。神の味噌汁(これも違うな)。みなやん、今度「我流流・我流への道」の中ででも教えてください。


「懐かしいです! 吉祥寺は思い出だけで飯が食えます!」
「あたしここでピアノに水割りこぼしちゃったんですよねー」
そうそう、それも吉祥寺。僕の兄が“逢いたいよ”の一番いいところで大きなくしゃみをして伝説になったのも吉祥寺。打ち上げの居酒屋でよっぱけた僕が女子トイレに入ってしまい「ああーん? なんでアサガオがねえんだあ?」って思ったのも束の間、酔いも醒めた心地で全速力で逃げ出そうとしたところを美菜呼に見つかり、その後一晩中酒の肴にされたのも吉祥寺。ふおおお、ロクな思い出がネエ。残った真実を信じたくない夜もある(“Cry for the day”by美菜呼)。
こんなときはライヴに戻ろう。美しい思い出と言えば、“ひらひらら”。美しく、儚い美菜呼の歌声にみんな嬉し哀しくなりました。そして、“夜明けの雪”。この二曲はピアノ弾き語りのメドレー。もうみんなもれなく瞳の潤い80%増量…(以下略)で、俯いて目頭を押さえている人もちらほら。

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「8月9日の風」はフォークギターの平石さん(!)とのデュオ。平石さんのギタープレイを聴いているとなんだか複雑な気持ちになる。平石さんがギターを弾いていると平石さんのベースの音が聴けない……うう、ジレンマ。そう思っているのはきっと僕だけじゃないはず。皆さん、クローン技術の進歩に期待しましょう(違うね)。

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「次はもうきゅう〜っきょく(究極)のラヴソングをお届けします。耳の穴をかっぽじって、聴け!って感じです……なんか違うか」
まあいいでしょう、なんか違うのはMCもレポもお互いさまだ。
究極のラヴソングってなんだろう。
「懐かしい曲です」
ピンときました。僕は我流流・我流会の一員です。わからないわけがありません。
「Sugarless boy」。わざと小さく声に出しました。周りのお客さんの視線が集まります。へえそうなのとか、ああこの人は古くからのリスナーなのね、という尊敬と羨望の交じった眼差しです。
「それでは、聴いてください。“Hero”
ふおおお。間違えた…。客席を見回すと、我流流・我流会の「あ〜るぐれい」と「るき」が「あたった!」「やっぱり!」って顔で嬉しそうに微笑み交わしている。後ろのほうで立って観ていた「まるとびむし」は……おお、なんと拳を握り締め、かつての西武のデストラーデを彷彿させる引きのガッツポーズ!
(負けたよ……みんな)
そんな余計なことを考えていたので前半は曲に集中できなかったような気がします。我に返らせてくれたのはやっぱり美菜呼の声でした。

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「My Hero あなたと出会って あたし バラードが歌いたくなった……」
このフレーズは、きっと一度でも“Hero”を聴いたことのあるすべての人の心に残っているものと思います。澄み切った、雑じり気のない一途な思い。確かに、これはとびっきりの恋をしないと生み出し得ない曲かもしれない。歌いたくなるのがブルースじゃなくて本当によかった(←おい)、タイトルの“Hero”が“英雄”に変わってなくて本当によかった…(←おいっ!)。
「雑じり気のない想い」で“ランドセル”を想像したあなたはかなりの美菜呼フェチ、いや、通です。そんな訳で(?)次の曲は“ランドセル”。ここからがまたすごかった。ピアノとエレキベースとハープに石川さんのパーカッションが加わり、客席のスウィング率も急上昇。美菜呼のコメント、「限界って、ぶち破れます!」。

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そして、いよいよ“チョコレートケーキ”。今月の主役は4人のお客さんと……美菜呼だ。

2004/09/16 photo172 「Happy Birthday to You!」

何回叫んだだろう。
パーカッションを抱えた石川さんが客席に躍り出て、指の骨も砕けよとばかりにリズムを刻む。眠っていた内なるプリミティヴな力が呼び覚まされる。
美菜呼が誰かの口許にマイクを差し出す。


「Happy Birthday to You!」
続くメロディー(♪ロウソクを立てて〜)は美菜呼がラララ〜で歌い、また次の人へマイクを向ける。みんな、打楽器だけのアカペラにも臆することなく、とっておきの声でおめでとうを叫ぶ。

「Happy Birthday to You!」

「Happy Birthday to You!」

「Happy Birthday to You!」

 ……。
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10回以上も続いただろうか。美菜呼と、美菜呼の歌に逢えたことを嬉しく思う人たちがここに集まり、何年前かの今日(月?)に美菜呼が生まれたことを祝福する。誕生日って、素敵だ。曲の後は気を利かせたファンからのバースデーケーキや花束、そして芋焼酎(……)などのプレゼント攻勢。

その後はもうたらすてぃーやぱらっぱ(註:これは“チョコレートケーキ”が生まれるまでの定番だった“ビッグチョコレートケーキ”内の美菜呼のスキャットです)。続木さんのハープで始まる“宝島”、パーカスがガタタンガタタンと列車の音を演出する“トレイン921号”、しっとり、じっくり聴かせた“こおろぎの夢”。

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MANDA-LA2に起こった小さくて大きな奇跡。最後のメンバー紹介の時に、メンバーがお互いのプレイを讃えあうようにずっと拍手してたのがなによりの証拠だ。そして、美菜呼の万感の思いのこもった一言。
「酒もいいけど、やっぱり歌が好きだあ!」
「おせちもいいけど、カレーもね」よりも胸に迫り、「やっぱり猫が好き」よりも心に残る(なんか違う……)。

アンコールは“春風”と“Cry for the day”。
美菜呼は約束を果たすために古い自分にさよならして、生まれ変わってこのMANDA-LA2に来た。先の“トレイン921号”もこの“春風”も、こんなに温かい気持ちで聴けたのは初めてだ。
“Cry for the day”の時にはもう時間を止めてしまいたい衝動に駆られ、なんだか嬉しいような哀しいような気分だった。

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でも時間は止まらない。吉祥寺の街並みもよく見ると随分変わっていて、僕がトイレを間違えた居酒屋はもうなくなっていた。つい先ほどの奇跡に包まれた現実も、今は思い出。でも、それでいい。美菜呼は明日の「我流流・我流への道」にきっとこう書く。
「また一つ、素敵な思い出が増えました!」
沢山の素敵な思い出を乗せて、トレイン921号は加速の予感。今後の美菜呼に注目だ。


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<へのもちん>

 

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